燃焼範囲図、爆発範囲 Flammable Diagram and Explosion Limits
1 気体燃料の爆発範囲
2 燃焼の3要素
2-(1) 着火元
2-(2) 燃料と空気
3 燃焼範囲図 Flammability Diagram
3-(1) メタンと水素の燃焼範囲図
4 爆発範囲
4-(1) 爆鳴気 Stoichiometric mixture
4-(2) 各種気体燃料の爆発限界
4-(3) 複数の気体燃料を混合した場合の爆発限界
1 気体燃料の爆発範囲
 気体燃料の爆発範囲は、次の通りです。参考までに発熱量も併せて表示します。
一酸化炭素は気体燃料として使う場合は限られていると思いますが、燃焼するので一覧表に入れてあります。
水素とアセチレンの爆発範囲は広いですが、メタンなどほかの炭化水素系の燃料ガスの爆発範囲は比較的狭いです。
このホームページでは、燃焼範囲図と、複数の気体燃料を混合した場合の爆発限界の推定値の計算方法などを扱いたいと思います。
2 燃焼の3要素
 燃焼に必要なものは、宇宙空間、家庭、一般の製造工場などで違うと思います。後者にも諸説あると思いますが、ここでは燃料(可燃物)、空気(酸素)、着火元(発火点以上の温度)の3要素としたいと思います。
(1) 燃料(可燃物:メタン、プロパン、ガソリン、軽油、木炭、石炭など)
(2) 空気(酸化物:酸素、ヨウ素、過酸化水素、硝酸、硝酸塩など)
(3) 着火元
2-(1) 着火元
 着火元は、摩擦熱、電気スパークなどです。
必要な機能は、燃料を発火点以上に加熱することです。燃料全体を発火点にする必要はなく、燃料の一部を発火点にできれば燃焼を始めることができます。
即ち、着火元は燃焼が始まるまでの時間、燃料の着火点以上の温度を保持する必要があります。
2-(2) 燃料と空気
 空気を、主成分である助燃ガス(酸素)と不活性ガス(窒素)に分けると、燃料、酸素、窒素の3要素になります。燃料が炭化水素系ガスの場合は、3種類の気体がどのくらいの比率で燃焼するかが問題になります。
 3変数を同時に表示する場合、直交座標では3次元になります。疑似的に2次元に表示することはできますが、グラフから数値を読み取るのは大変難しくなります。
3 燃焼範囲図 Flammability Diagram
 可燃性ガス、酸素、窒素の3要素を同時に表示するのダイアグラムを燃焼範囲図といい、正三角形のそれぞれの辺を3要素の軸にとります。
 燃焼範囲図は、一定の圧力、温度で表示します。また、気体の単位モル当たりの体積は同じなので、各辺の目盛は時計回りに0%から100%です。このため、正三角形のどの位置でも3要素の合計は100%。
3-(1) メタンと水素の燃焼範囲図
 メタンと水素の可燃範囲を模式的に示したのが下の図です。なお、数値はなるべく正確にしているつもりですが、完全に正確ではありません。
 左図は、メタン、窒素、酸素を任意の割合で混合した場合のダイアグラムです。これは、例えば実験室で3種の混合比を変えてテストをする場合などに当てはまります。
 右図は、水素、空気、窒素を任意に割合で混合した場合のダイアグラムです。こちらは、工場の加熱炉に送る燃料ガス配管に窒素を入れた場合などに相当します。
 左図の窒素の軸(右上の辺)は、窒素ですが、二酸化炭素などが混じっている場合は、窒素と二酸化炭素の和です。
 酸素の軸(下辺)のX印は、酸素濃度21%、窒素濃度79%の点です。したがって、X印は空気を表しています。X印から上部頂点に向かう矢印は、大気中に燃料を混ぜた場合のラインでエアラインといいます。窒素と酸素の比率は大気(×印)と同じで、矢印の上になるほど大気が少なくなり、その分燃料が増えていきます。このラインから外れた領域は、空気の組成とは違います。
 右の下辺は、空気を軸にしていますので、全領域が空気です。右上の窒素軸は、空気と水素の混合気体に窒素を加えることを意味しています。
4 爆発範囲
 空気中で燃焼する可燃性ガスの割合を爆発範囲と言います。爆発範囲の上限をUEL(爆発上限界)、下限をLEL(爆発下限界)と言います。
左の図は、横軸を酸素にしています。いわゆるエアラインと呼ばれる、酸素:窒素=21:79のラインが燃焼範囲を横切る部分が爆発範囲です。メタンでは、LEL=5%、UEL=17%程度で、爆発範囲が狭いことがわかります。
 下の右図は、横軸が空気です。窒素=0の場合がエアラインなので、水素の軸がエアラインになります。水素では広いほうのデータでは、LEL=4%、UEL=74%で、爆発範囲が広いことがわかります。
 上の図は、燃料が大気に均一に拡散している場合です。下の絵のように、可燃性ガスを大気中に放出している場合、平均値が爆発範囲外であっても、部分的に爆発範囲に入る可能性があるので、着火元となる火気は厳禁です。
4-(1) 爆鳴気 Stoichiometric mixture
 過不足なく燃焼が起きる割合の混合気を爆鳴気と言います。化学式で言えば、気体燃料の酸化の化学式が、爆鳴気そのものです。
 下の式は、メタンと水素の燃焼の化学式と、燃料と酸素、燃料と空気の爆鳴気で、燃料が占める割合を表しています。後者の式は、燃焼範囲図の燃料軸上の爆鳴気の位置を計算しています。
この点を燃料ガスの軸におき、そこから窒素=100%まで伸ばした矢印上では、すべて過不足なく燃焼します。
4-(2) 各種気体燃料の爆発限界
 下の表は、各種気体燃料の爆発限界と、参考までに発熱量をあらわしています。発熱量の詳細は熱力学を参照してください。
4-(3) 複数の気体燃料を混合した場合の爆発限界
複数の気体燃料を混合している燃料の場合、LELは次式で与えられます。
東京ガスのホームページによれば、A13の組成は次の通りです。
この組成を上の式に入れて計算すると、LEL=4.5、UEL=14.4になります。主成分のメタンより、爆発範囲が狭いという計算結果になりました。
Author: T. Oda
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